主要な戦略の損益構造
スプレッド・ストラドルの「仕組みとリスク」
オプションは、複数の銘柄(レッグ)を組み合わせることで、損益の「形」を設計できるのが特徴です。この記事では、代表的な組み合わせがどんな損益カーブになり、どこにリスクが集中するのかを中立に整理します。「どれが儲かる」という話ではなく、あくまで各構造の性質の説明です。
0. 前提:4つの基本レッグ
あらゆる戦略は、次の4つの「単品」の組み合わせで説明できます。用語の基礎はオプションの基礎を先に読むと理解が早まります。
| 単品レッグ | 損益の形(満期時) | 最大損失 |
|---|---|---|
| コール買い | 上昇で利益、下落はプレミアム分の損に限定 | 支払プレミアム |
| プット買い | 下落で利益、上昇はプレミアム分の損に限定 | 支払プレミアム |
| コール売り | 横ばい〜下落で受取プレミアムの利益、上昇に弱い | 理論上、上限なし |
| プット売り | 横ばい〜上昇で受取プレミアムの利益、下落に弱い | 大きい(指数下限まで) |
1. 垂直スプレッド(バーティカル・スプレッド)
同じ満期で、権利行使価格の異なる同種オプション(コール同士、またはプット同士)を、一方を買い・もう一方を売りで組む構造です。
仕組み
たとえば「権利行使価格の低いコールを買い、高いコールを売る」と、上昇局面で利益が出るものの、その利益は売ったコールの水準で頭打ちになります。買いだけの場合と比べて、売りで受け取るプレミアムのぶん初期コストが下がる一方、利益の上限も生まれます。
リスクの形
- 最大利益・最大損失がともに限定される(2本の権利行使価格の幅と、受払プレミアムの差で決まる)。
- 売りレッグを買いレッグが「カバー」しているため、コール売り単品のような無限の損失にはならない。
- ただし損益は限定されるぶん、相場が大きく動いても得られる利益には上限がある。
2. ストラドル
同じ権利行使価格のコールとプットを、同時に「両方買う」または「両方売る」構造です。方向ではなく「大きく動くか/動かないか」に着目した形になります。
ロング・ストラドル(両方買い)
上下どちらでも、大きく動けば利益が出る一方、動かなければコール・プット両方のプレミアムを失います。2つ分のプレミアムを払うため、損益分岐点は現在値から上下に離れた位置になります。最大損失は支払った合計プレミアムに限定されます。
ショート・ストラドル(両方売り)
逆に、相場が動かなければ受け取ったプレミアムが利益になりますが、大きく動くと損失が急拡大します。コール・プット両方の売りを含むため、上下どちらの急変にも弱い構造です。
3. ストラングル
ストラドルの権利行使価格を上下にずらした形です。コールは高い権利行使価格、プットは低い権利行使価格を使います。ストラドルよりプレミアムが安くなる(買いの場合はコストが下がる)一方、利益が出るにはより大きな変動が必要になります。売りの場合は「一定の値幅なら利益、そこを外れると損失拡大」という性質です。
4. アイアンコンドル
プット側の垂直スプレッドと、コール側の垂直スプレッドを組み合わせた4レッグ構造です。相場が一定のレンジに収まっていれば受取プレミアムが利益になり、両端の買いレッグがあることで最大損失が限定されます。ショート・ストラングルの「損失無限」を、外側の買いで蓋をした形と考えるとイメージしやすいでしょう。
- 最大利益:中央のレンジに収まった場合の受取プレミアム(限定)。
- 最大損失:スプレッドの幅から受取プレミアムを引いた額(限定)。
- レッグ数が多く、手数料・板の厚みなど実務的なコストも増える点に注意。
5. 「損益が限定か/非限定か」で整理する
戦略名を丸暗記するより、次の軸で捉えると混乱しません。
| 損失が限定される構造 | 損失が非限定・非常に大きい構造 |
|---|---|
| 買い単品/垂直スプレッド/ロング・ストラドル/アイアンコンドル | 裸のコール売り/プット売り/ショート・ストラドル/ショート・ストラングル |
損失が限定される構造でも損はしますし、非限定の構造が常に危険というわけではありません。重要なのは、自分が取ろうとしている形の「最悪のケース」がいくらなのかを、取引の前に数字で把握しておくことです。
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